【人事にまつわる課題】 ウェルビーイングを意識した経営とは? <後編>

  • 2023.2.1
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前編では、ウェルビーイングを意識した経営とは?
ということで、その前段のウェルビーイング理論や研究と現実のご紹介をしました。

職場でのウェルビーイングを実現するために、人材戦略と経営戦略の分断をやめて総合的な視点で経営を組み立てよう!とお伝えしましたが、
「それは、具体的にどうすべきなの?」
「施策予算が難しい、または人員配置も厳しい」
こんな声が聞こえてきそうです・・汗

では、実際の現場の声はどうなのか?!
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントで調査した結果がありますのでご紹介します。

質問 ウェルビーイングを追求することは、従業員および組織にどのような影響があると考えますか? 当てはまるものをすべてお選びください。(複数回答)

多くの経営者が「エンゲージメント向上」への期待をお持ちのようです。
60%超えですね。
また、気になるのは「育児・介護の仕事との両立」です。
少子化対策の柱として「育児・介護休業法」が改正されましたし、今後はより育児や介護の両立が注目されてくるのではないかと感じます。

質問  貴社では、従業員や組織の状態を把握し、活用するための施策に取り組んでいますか?
当てはまるものをすべてお選びください。(複数回答)

ストレスチェックはほとんどの事業所で、法律での義務化もあり、実施されている割合は多いものの、測定結果を活かし、課題抽出やそれに対応する施策をしている企業が10%未満で少ないことがわかりますね。「もったいない」という感じもしますね。

では、さっそく核心部分へLet’s Go!

目次

1、企業のウェルビーイングを向上するためのノウハウとは?
  職場のウェルビーイング調査
  実現するための3つのポイント
2、社内で取り組む方法<事例から学ぶ>
  ウェルビーイング経営のポイント
  運用ステップ
  Well-bingを経営理念やビジョンに掲げる企業(一例)
3、まとめ

1、企業のウェルビーイングを向上するためのノウハウとは?

ウェルビーイングを企業経営に取り込もうとする場合、はじめに何を考えていく必要があるのでしょうか?

予防医学研究者であり、公益財団法人Well-being for planet Earth代表理事をされている石川先生の言葉では「ウェルビーイング」は「良く生きている状態」のことだそうです。
「良く生きている状態」は人ぞれぞれで、「これがウェルビーイングの高い働き方である」は人それぞれなので、決まったカタチはない。ということです。

つまり、自社のウェルビーイングは何か?を個々それぞれに明確にすることから始まります。
誰のためのウェルビーイングなのか?
何のためのウェルビーイングなのか?
をより深くフォーカスする必要があります。

それと同時に、押さえておくべき研究の結果があります。
ウェルビーイングのカタチは様々あって、どんな要素でも良いのですが、

決定的に大事なのは、
「決定要因=自己決定 ができる」ということが非常に重要で、直接的にウェルビーイングに影響することがわかってきたそうです。

さらに具体的にいうと、様々な人生の選択肢から、自分で自己決定できることが、ウェルビーイング向上に直結しやすい、ということです。

更に付け加えると、困った時にヘルプ救済をお願いできる人がいるという受け皿的な場所、人・コミュニティがある、そういう環境であることも重要なのだそうです。

職場のウェルビーイング調査
〜ウェルビーイングに効果的なものは何か?が見える!?〜

バークレーヴァウチャーズ株式会社による世界における職場でのウェルビーイングに関する「2016年度 Edenred-Ipsos Barometer調査」とは、日本を含む世界15カ国、14400人の従業員を対象に、職場でのウェルビーイングに対する満足度などを調べたものです。

この調査結果を、前回の「日本のウェルビーイングを知る」という項目で紹介しましたが、日本のウェルビーイング満足度は44%と最下位でした。

今回紹介する調査では、更に職場でのウェルビーイングの基盤となる評価項目を以下の3分野でカテゴライズしています。

1、職場環境
設備、ワークライフバランス、求められている仕事内容の明確化など。
仕事に満足している従業員は、特にその職場環境に居心地の良さを感じている従業員です。
<評価項目>
・目標や任務など自分が職場で求められていることをはっきりと認識している。
・問題を抱えていたら同僚がサポートしてくれる。
・あなたが利用できる設備や資材は適切である。
・仕事と私生活とのバランスに満足している。

2、上司からの配慮
管理者からの敬意、スキル管理など。
ウェルビーイングは、管理者が従業員にどの程度注意を払っているかにも左右されます。
<評価項目>
・経営陣はあなたを尊重してくれている。
・経営陣はあなたのスキルやトレーニングなどに気を配ってくれている。

3、仕事へのモチベーション
朝仕事に行くのが楽しい、仕事への興味、仕事に刺激を感じる、など。
日常的な従業員の感情も考慮に入れなければなりません。
<評価項目>
・自分の仕事は面白いと感じている。
・職場は刺激的な環境だ。
・毎朝職場に来るのが楽しみである。
・勤めている会社や組織における自分の将来について不安がない。

出典:株式会社バークレーヴァウチャーズ「2016年度 Edenred-Ipsos Barometer 調査」 

結果は、日本は特に3の「仕事へのモチベーション」における満足度が特に低いです。
「会社や組織に対する将来について不安がない」28%(世界平均65%)
「毎朝職場に通うのが楽しみである」 30%(世界平均67%)
驚くほど低い。ですね・・・汗

この調査結果は日本全体の話ですが、
自社においても仕事のモチベーションにつながる満足度が低い傾向がある、と仮説ができます。

とすると、満足度の低い部分を改善する施策を実行すれば、ウェルビーイングを上げられる、ということです。

つまり、
・会社や組織への希望を持てる、安心を得る場所であること
・職場に行くのが楽しみとなること
を従業員が感じる仕組みを作る、選択肢を作ることで職場のウェルビーイングが効果的にアップする!!ということですね。

ウェルビーイングを実現するための3つのポイント

①現状(潜在原因)を知る
あなた(従業員)にとってのウェルビーイングはどんなことなのか?
どのような要因によってウェルビーイングとなるのか? 
まずは、できるだけ一人ひとりについての現状を理解する。
下記のワークシートを使い、自身や社員の潜在意識(現状)を整理するのをオススメします。
意外な潜在意識の棚卸しができます。
また、定期的に実施することで変化なども見えてきます。
ちなみに、ご主人の奥様の気持ちがわからない問題は、このワークで解決するそうです!?

 

②多くの選択肢・多様性のある制度から選べる
ウェルビーイングになるための多様性ある多くの選択肢を創設する。

例えば・・・
結婚出産後の自由選択・復職プラン(キャリア選択の自由、職種転換の自由)
時短勤務、サテライト・在宅ワーク(場所や時間の自由選択)

③自己決定ができる企業風土
自分の意志で選択できる風土(環境)を整備、醸成する。

例えば・・・
残業せずに帰れる雰囲気・環境
男性社員が育児休暇を取りやすい環境
介護休暇を取りやすい環境 
職種転換を申し出やすい環境   など

2、社内で取り組む方法<事例から学ぶ>

これは2022年5月の経産省のホームベージの画面のスクリーンショットです。
大々的にウェルビーイングについての取り組みを掲示してます。

==経済産業省の令和4年5月の人材伊藤レポート2.0==
このレポートには、様々な企業の人的資本・経営の取り組みの実践・実例について整理されています。

とても読み応えのある内容ですが、これを分解していくと自社オリジナルのものとして構築できるヒントがあります。

人的資本経営に歴史ある企業は、既に10年前から実施しています。つまり、10年以上の中長期に渡り経営トップ自ら取り組むべき事業だと言い換えることができます。
また、定量化や具体的な KPI 設定をされています。

例えば・・・グローバル大企業の日立製作所ではおよそ10年前から人的資本戦略と経営戦略を連動させ事業活性する取り組みをされています。現在は、事業変革に対応できるグローバル人財マネジメント基盤の強化やその育成に注力されていますが、当初(2012年ごろ)は「人財データベース化」と「選抜と育成」が始まりでした。これまでの取り組みの変遷や中長期の目標設定の仕方などどのような視点で取り組み、どのような変化を遂げたのか、また経営戦略と人材資本戦略をリンクされる実践など実に興味深い内容です。ちなみに、当初から人材ではなく「人財」です。

「人材戦略と経営戦略」からの視点、「企業文化への定着」からの視点など、どのような視点で目標や取り組みをした背景があるのか?読み解く楽しさもある報告書です。
例えば、担当部署と経営陣とで読み合わせをしても面白いかもしれないですね!

ウェルビーイング経営のポイント

①組織としてどのような「ウェルビーイング」状態を理想とするのかを具現化する
②「ウェルビーイング」を作り出すための企業思想・方針などを明確にする
③個人と企業をリンクさせ総合的に把握する
④「ウェルビーイング」の定量化と見える化をする

運用ステップ

自社内の「ウェルビーイング状態」をできるだけ定量化することが、運用を成功させるコツです。
ステップ1: 人的資本に投資する
ステップ2: 人的資本への投資した後の情報開示・可視化・サーベイ提示
ステップ3: 上記1、2を長期間に渡りサイクルする

いくら人的資本への投資ができたとしても、内外への情報開示、可視化が上手にPDCAサイクルできないとウェルビーイングの向上には繋がりません。
実施している企業では、1年ごとにレポートを掲示しています。

Well-bingを経営理念やビジョンに掲げる企業(一部) 

既にウェルビーイングを経営理念として掲げ実施している企業の一部をご紹介します。
企業のホームページや1年間の報告書を一読してみてください。
かならず共感できる点や気付きがあるかと思います。
自社のウェルビーイング経営へのヒントや、出来ることの具体案を見つけてみましょう。

  出所:各企業ホームページより

3、まとめ

ウェルビーイング効果の影響力・波及力の大きさを改めて認識できたのではないでしょうか。
とはいえ、なかなかこれらを実行することはハードルが高い・・・でしょうか。

この問題は経営陣を筆頭に動くことが大切です。
従業員や関係するステークホルダーの行動や結果の機微を把握し、対応する行動力も重要です。
企業(経営側)は、従業員やステークホルダーと共に成長し続ける能力を開発・育成したり、持続する方法についての人財戦略と経営判断が求められるでしょう。

この機会にまずは以下の問で「全社員の状態を知る」ことから始めてみてはいかがですか?

◉現在のウェルビーイングは、10点満点で何点ですか?
◉ウェルビーイングを向上するには、どんなことが必要だと思いますか?

この問いの整理から、自社のウェルビーイングの施策が見えてくるはずです。

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