【人事にまつわる課題】職場でのメンタル不調者が多いのはなぜ?
―不調者の症状とその対処法から予防策まで―【経験者が語る】

  • 2022.8.18
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突然ですが、「メンタル不調者」について、
どのような症状が、具体的に「メンタル不調な状態」となるのか(であるのか)をご存じでしょうか?

どんな症状でどの程度なら専門病院にいくべきなのか?
ラインケアとしての面談と定期的なケアで問題ない程度なのか?

ここから、危ない。。そこまでではない。。
ぶっちゃけ、症状はひとそれぞれでわからない。と思います。
罹る本人もわからない、と感じています。ましてや初めて罹る場合はなおさらです。

実は、どんな人でも「メンタル不調になる可能性がある」そうです。

だからこそ、従業員のリスク管理として
・メンタル不調となる要因
・対処方法・予防策
をきちんと皆で理解し、共有認識を深めておくことが重要です。

特に、コロナウイルス感染症拡大の影響で 多くの人々が自分ではコントロールできない大きな変化(ストレス要因)で心にダメージを受けやすくなっているからこそ大事なことです。

職場における「メンタル不調者をゼロへ!」はムリです。が、未然に防ぐ、発生率を下げる、離職率を下げる。ことは可能です。

今回のリードメリットは、以下です。
・メンタル不調の知識を獲得
・メンタル不調者への対処法がわかる
・予防対策のポイントが知れる

目次

1、メンタル不調者が多いのはなぜ?
 メンタル不調を知ろう!―原因と症状―
  ストレス要因
2、どんな症状?
 自分が分かる症状(チェックリスト)
 周りが分かる症状(チェックリスト)
3、メンタル不調者の対処について(関連法令など)
4、【経験者が語る】メンタル不調者の対処法と予防策
 メンタル不調者を出さない予防策
 メンタル不調者の対処法(社内体制整備のない中小企業バージョン)
5、まとめ

1、メンタル不調者が多いのはなぜ?

メンタル不調を知ろう!ー原因と症状ー

自分ではコントロールできない大きな変化(ストレス要因)にぶち当たり、心にダメージを受け不安定となることでメンタル不調を引き起こします。

ストレスには、外的、内的要因によるものがあり、それはネガティブな事柄だけでなくポジティブにも当てはまります。
ストレス要因>
「外的ストレッサー」・・・ 自然に代表される外部環境や社会環境を要因とする       
「内的ストレッサー」・・・ 個人的な状態や生理的状況の変化を要因とする     
の二つに大きく分けられます。

2、どんな症状?

自分が分かる症状 (チェックリスト)

5個以上は注意!!です。

★厚労省が世に出しているチェックリスト
5分でわかる職場のストレスチェック
職業性ストレス簡易調査票(厚生労働省)

周りが分かる症状(チェックリスト)

 

5個以上は注意!!です。

これらの要因や知識を促進するためのツール(以下リンク参照)がありますので、これらをベースに自社の労働環境の整備の一環として取り組めるとベストかと思います。
厚労省が製作した「e-ラーニング」などツールとマニュアル

3、メンタル不調者の対処について(関連法令など)     

メンタル不調者の周りの社員の対処法のポイントです。
①声をかける
②話を聴く、専門家へ繋げる
③日頃から部下への関心を続ける

要は、表情や行動などの変化を見抜けるようにする。ということです。
特に②③については、関連部署の上司の役割として管理しましょう。

具体的な体制づくりなどについて、厚生労働省「労働者の心の健康保持増進のための指針」で提示されています。自社オリジナルのヘルスケア&予防体制を構築しましょう。

出典:厚生労働省の指針(労働者の心の健康の保持増進のための指針

ここ数年、関連法令の整備が立て続けにされています。
以下に整理しましたので、労務管理や事業所のマネジャーの参考にしてください。 

地域産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や労働者に対して、原則無料で提供しています。

◉労働安全衛生法の改正
・産業医の機能強化(2019年4月〜)
 従業員50人以上の設置義務(罰則あり)
 産業医の権限が拡大、衛生委員会及び使用者への関与が強く規定された

・ストレスチェック制度導入(2015年12月〜)
 毎年1回全従業員への実施義務

労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の改正(2022年4月〜)
 すべての企業が対象になり、以下が義務化される。
 ・パワハラ防止方針の明確化や相談体制の整備
 ・パワハラに関する労使紛争を速やかに解決する体制を整えること

4、【経験者が語る】メンタル不調者の対処法と予防策

同僚や、部下にこのような症状が出て現場から離れて行くのは本当に悲しいですよね。
とりわけ、苦労を分かち合った仲間であればなおさらだと思います。
また、苦労して出会えて採用できた社員が離職者となるのも本当に辛いです。

ここでは、私の経験談として、具体的な事例を交えながら、整理していきたいと思います。

メンタル不調者を出さない予防策とは?

いきなりですが
経験から得た予防対策のポイントです。

対象者は女性社員についてです。
若年層の女性社員についてのケアは、正直、とても重要だと思っています。
特に20代後半〜30代のライフイベントを経験した女性ほどメンタル不調に陥りやすい傾向、又は非常にメンタルのうねりが激しい傾向にあると経験から感じています。

ということを踏まえて。。。

①社員の本音と建前を知る

結婚出産後も働き続けたいと意欲的な場合、中長期の目標・キャリア形成などの話題をざっくばらんに触れつつも、本人の潜在意識(本音部分)について、大まかに把握することが大事です。

理由は、ライフイベントきっかけでの配置換えや職種転換、または時短勤務などを実施する際に、本人の納得感を充分に得てから、実施することが大事だからです。
「充分なコミュニケーションを重ねる」という意味での「本音と建前を知る」というニュアンスでしょうか。

例えば・・・(経験談)
本心は産後に外営業を続けるつもりでいたが、「家庭時間について」建前的な話を同じグループ内で話した情報を聞き、上司が本人との対話なしに、彼女の配置換えを申請してしまう、という残念な話の「現場管理職あるある」です。

現場の上司は本人のために良かれと思い、したのでしょうが。。。

つまり、普段から社員とのコミュニケーションを重ねて、
・結婚出産後に復帰したときの働き方
・キャリアイメージ、理想
・休みの過ごし方(家族関係)
これらの情報や傾向を獲得し、果たして配置替えが必要か・それとも職種転換、時短勤務など、どの形が本人の納得感を持って意欲的に働けるか。の潜在(本音)と建前を知りましょう。

②1on 1の定期面談をする (実施ポイント)

・共感を多めに強めにしつつ、家庭事情も探りながら現状把握する
・医業カルテのように面談の経過を記録し、人事部で情報管理する
・特定上司以外にも様々な関係する人たちと面談を実施する

例えば・・・
定期的な面談を設けることで、ストレス解放にもつながると考えています。
「前回心配している話してたけどどうなった?」など、時系列で話を追えるようにメモを残すことも大事です。
食事をしながらの面談について予算をつける、ということも良い効果を得た経験があります。
他にも全く関係のない部署と面談するなども、互いに新たな行動を生み出すヒントやきっかけを生むでしょう。

メンタル不調者の対処法(経験者が語る:中小企業社内規定のないバージョン)

私の周りでは、結婚・出産後にメンタル不調になる人が多数おりました。

その原因(傾向)は、出産後に配置換えや職種転換させられた。という所属からの排除感を持ったまま勤務し続けていたことや、前所属上司からの説明がない、または納得感のないままの職種転換がストレスのメインだったようです。
(当時の事業所は営業がメインのため、基本的に総合職に配置転換しか選択できなかった)

加えて家庭では子供の預かり問題や、家庭問題も重なっていたようで、これまでの環境や状況が大きく変わり、対応していくことに必死で産後直後は特にホルモンバランス、自律神経の不安定な時も重なり、色々なストレスが一気に加重され心が崩壊してしまったようです。

セオリーとしての対処に「原因を探さない」と言いますが、
少なくともストレスになっている、または感じている原因を排除することは必要なので、原因探しは必要かな、と感じています。

不調になってからの彼女らは、頭脳明晰で営業をバリバリこなしていた姿は1ミリもない、本当に「ぬけ殻」でした。
何時間もPCの前で同じ画面を見て過ごしていたり、お酒臭い二日酔いの状態で出社してみたり、突然泣き出してみたり。夜中に電話をかけてきて、よくわからない妄想の話を繰り返したりしました。

対処法① 冷静に話を傾聴する

経験上、とても大切な行為です。傾聴です。

理由は、自分から話してくれるステージならいいのですが、全く話さない、話せなくなるともう先に進めなくなります。(心閉ざす状態)

ポイントは、傾聴する時間を、気を使わせないように作ることです。
「自分のために忙しいのに時間を割いている」と負い目を感じさせることはNGです。

私が実際に対応した不調者は、初期の頃はとにかく何かにイライラして、攻撃的でした。
すぐに意見して、自分の主張ばかり並べていました。
私以外にも攻撃的になり、他の部署の社員とイザコザを起こしたり。。。と。

しばらく経ってから、落ち着いたかな?と思ったら遅刻・欠勤が増え、とにかく体調がすぐれない感じで、二日酔いの状態で出社することも度々。。

今となっては、例え本人がイライラした対話状態だとしても時間を気にせずにゆっくり傾聴すべきだったと後悔しています。

対処法② 会社での姿を家族にも共有し理解してもらう

①での話も含め、出勤した丸1日をどんな感じで過ごしているか、家族にも共有してもらうことが重要です。

理由は、意外に家族には全く話していないことが多いからです。
自宅に戻るとあまりひどい症状が出ない、または核家族だと大人が少なく、良く見えていない。ということもありますよね?
本人もうまく家族に隠しているケースもあります。
例えば、旦那さんが奥さんの髪型の変化に全く気がつかない。。など(笑

ポイントは、家族には「今すぐ直接本人とは対峙せず」「よく様子をみて欲しい」ことを伝えます。
その後、家族からのリポートや休日の状態をレビューし状況を共有します。そのためにご家族との面談なども幾度も実施しました。
状況により産業医や総括安全衛生管理者などに相談・検討し、専門医への受診が必要なときはできるだけ受診に付き添っていただくよう、家族にお願いしましょう。

対処法③ 無理に特別なことをしない・変えない 

症状の程度によりますが、取り立てて特別扱いはせずに、ただストレスであろう事柄との接点は持たないよう、気をつけて周囲に協力体制をつくり対応してもらいます。

理由は、本人はただでさえナーバスになっていますので、特別に励ますために連れ出したり極端に仕事を少なく配分するなどすればするほど、マイナススパイラルになるからです。

ポイントは、関係者は名アクターを目指そう!!です(笑 ←本気です!

例えば、
業務内容を変更したり、少なくする場合には周りのスタッフに、不調状態の理解と共有をし、本人には現状(減らした)の仕事量がとてもベストであるように感じさせましょう。

または、自分が辛い状態(メンタル不調)であることを、多少なりとも理解しているなら業務負担を減らしていくことのコミュニケーションをして理解を進めてから実施しましょう。

対処法④ さまざまな視点からの客観的な情報を揃え、勤務について検討する

メンタル不調者の生産性は、圧倒的に悪くなります。
残念ながら、生産性の低い状態が業務に支障が出てくるようになってきたら、そのまま勤務させるのか。しないのか?
組織としてどうするのか?問題になると思います。

判断について組織として、どうすべきか。はとてもナイーブですが、杓子定規に決定せず、以下の点について情報を揃えつつ、丁寧に積み重ねることは大切です。互いに遺恨を残さないためにも。。

・本人やご家族との話し合いを重ねる。(病状と本人の気持ちについて)
・産業医(専門医)などの意見を整える。(病状の状況について)
・現場マネジャー、チームの意見を整える。(生産性の低下について)

産業医の意見を聞きながら、また本人および家族の意見も聞きながら、基準、判断材料など、どうするべきか。を本人の意見も大事にしながら、個別に判断できるように経営者に提示、判断できるよう報告書などの準備をしましょう。

会社として多様性を受け入れ、それを実施することで本人の居場所を作ることも回復の糸口になるのではないか?周りにも良い影響ではないのか?など、個人ごとに、悪化させないために何が効果的か?考え、進言したりトライした記憶があります。

私の経験から得た対応法の紹介により、優秀で意欲的な社員(人財)の組織離脱とならないように、ほんの少しでも参考やヒントになれば・・・というメッセージでもあります。

5、まとめ

今回は、メンタル不調の原因とその症状、予防ポイントについての知識を深める目的の内容でした。

メンタル不調になる原因等や症状を知ることは、私自身、自分の過去の呪縛から解かれた効果がありました。
「自分のせいで彼女をおかしくさせてしまったのではないか?」と度々思い出していた節もあり、トラウマ的な部分でその後配属部下の対応にとてもセンシティブになっていた時期もありました。

当時、より深い知識があれば、女性特有のストレスケアが必要なタイミングや、組織としての在り方についても建設的で多様性のある提案を出すことができただろうし、症状によっての機微な対応もできたのではないか?と後悔の想いがあります。

メンタル不調には誰しもがなり得ることであることを認識し、
その原因や、起こり得る要素、タイミング、対応など、人それぞれであるけれど、シグナルを知る(わかる)だけでも、セルフケアやラインケアなどで充分に回復できるケースもあるはずだと思います。

そして何より、企業組織の一員であるからには、
「一人はみんなのために、みんなが一人のために」の精神や企業文化の醸成が促進され
チームウェルビーイング向上により、イノベーション力が活発化するものと思います。

少しでも参考になれば、幸いです。

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