
遂に「エンゲージメント」にフォーカスする回が巡ってきました。
「ウェルビーイング」の追求による効果についての調査結果で、多くの企業が関心や期待を持っている項目が、「エンゲージメントの向上」への影響でした。
出典:株式会社アドバンテッジリスクマネジメントジャーナル
なぜ多くの企業幹部の方は、エンゲージメントの向上への影響を期待しているのでしょうか?
その理由は、
・インターネットを初め、ITの進化により世界の競争優位性に大きな変革が起きているなか、新型コロナウィルスの感染拡大でより持続可能なことが、ごく稀になったこと。
・生産年齢人口減少に加え、働き方や価値観も従来のままでは立ち行かなくなる時代となったこと。
・企業経営の健全性を示す先行指標として、社会の課題解決に貢献することや財務面以外を重要視されていること。
日本政府を初め、多くの企業が、時勢の変化にアジャストする必然性があり、変化に強い国や柔軟性のある持続性の高い企業を目指すことの必要性が喫緊に迫られています。
そこで、職場の「エンゲージメント」が重要になってきた!ということです。
個人と企業が対等な信頼関係をより高度で強固なものにするにはどんなことを大切にすべきなのか?
知れば知るほど、アフターコロナ時代においてとても意義深く感じられると思います。
今回のリードメリットはこちら!
内容を前編、後編で分けております。是非、続けてご覧いただきたいと思います。
<前編>
①エンゲージメントが注目されている背景と必要性がわかる!
②エンゲージメントと似ている言葉との違いや影響するカテゴリーがわかる!
<後編>
③ワークエンゲージメントを高める施策のHowtoヒントが得られる!
目次
1、エンゲージメントが注目されるのは何故?
エンゲージメントとは
エンゲージメントが注目されるワケ
1-1 仕事への熱意あふれる社員の割合は最下位レベル
世界のエンゲージメント調査データ
1-2 日本の国際競争力の低下
GDPランクデータ
世界競争力ランクデータ
1-3 経済競争優位の変化
競争優位性の変化とビジネス戦略の関係
1-4 生産人口の減少・世代交代
1-5 勤続意欲は非常に高い
2、エンゲージメントを高める2つの組織論
ホラクラシー組織
ティール組織
3、エンゲージメントに類似する言葉との違い
「従業員満足度」「ロイヤリティ」「モチベーション」との関係
「活動水準」「仕事への態度・認知」を用いた関連する概念整理
4、エンゲージメントに影響する6つのカテゴリー
5、前編まとめ
「エンゲージメント」今、多くの企業で非常に関心のあるワードではないでしょうか?
特に、新型コロナウィルスの感染拡大がキッカケで、より強く意識されるようになったように思います。
リモートワーク等による働き方の変革、コミュニケーションの形が大きく変化する中で、個人のエンゲージメントの状態を考える必要性に迫られているのだと想像します。
「社内、部署、チームに活気・モチベが感じられない」
「目標を達成しようとする意識が低い」
こうしたお悩みごとは、ここ最近よくお聞きする内容です。
そこで解決策として、
「チームエンゲージメントを高める」ことなんですが、その効果はご存じかと思います。
改めて研究結果としては、次のとおりです。
- 従業員エンゲージメントが高い従業員は低い従業員と比べ、87%離職率が低い。
(Driving performance and retention through employee engagement. Corporate Leadership Council) - 従業員のエンゲージメントが5%向上すると営業利益は7%増加する。
(Towers Perrin 2004 European Talent Survey: Reconnecting with Employees: Attracting, Retaining, and Engaging, Towers Perrin) - 従業員エンゲージメントの高い会社の利益率は低い会社に比べて12%高い。
(Gallup Q12 Meta-Analysis, Gallup) - イノベーションが出来る
- 変化への適応能力が高い
今回は、組織内で取り組みするにあたり
実施するための参考となる情報、ヒント、ポイントなど整理、ご紹介します。
それでは、今回も始まりは「そもそも論」です!
1、エンゲージメントが注目されるのは何故?
エンゲージメントとは?
そもそも、エンゲージメントとは何なのか?
エンゲージメント(engagement)とは、「婚約」「誓約」「約束」「契約」とあります。
「深いつながりをもった関係性」を示す言葉といえます。
耳馴染みある言葉には、以下のようなものがあります。
・愛社精神
・社員の自発的な貢献意欲
要は、職場におけるエンゲージメントとは
会社の方向性をきちんと理解し思い描く未来の姿に到達したいと社員一人ひとりが、
腹の底から納得し、熱意をもち主体性を持って行動できること です。
ポイントは他人事化するのはNGだよ。ということです。
普段から自分ごとのように自発的行動ができる状態のことです。
そして、何よりも大事なことは、組織エンゲージメントの意味は「関係」のことで、組織との関係性が上下関係、侍従関係、労使関係、のような関係でなない。ということです。
エンゲージメントとは、
「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」のことをいいます。
つまり、対等の立場で確固たる信頼関係を構築した状態=エンゲージメントが高い
となります。
また、厚生労働省の「労働経済の分析」では、エンゲージメント「熱意」「没頭」「活力」の3つが揃った状態のことである。と表現しています。
出典:厚生労働省令和元年「労働経済の分析」より
エンゲージメントが注目されるワケ
1-1 仕事への熱意あふれる社員の割合は、最下位レベル
ここで、日本のエンゲージメントの状態を見ていきましょう。
組織のエンゲージメントを測るツールとして、米国のギャラップ社が実施している「エンゲージメント・サーベイ」があります。
この調査によると、2017年は日本企業はエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」の割合が6%で、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位レベルでした。
「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%です。

引用元:株式会社カオナビ 「エンゲージメントサーベイとは?」
2022年の直近データでは「熱意あふれる、高エンゲージメント社員」は5%に低下してます。
東アジアが 6%から17%にUPと増加している中、日本の状況は残念な数字です。
とても、先進国のエンゲージメント数値とは思えない結果ですが、実際に従業員として、肌感覚では「なんとなくわかるような気もする。」という方もいるのではないでしょうか?
さらに、世界的に日本の国際競争力(=GDP)はどう推移しているのか、見てみましょう。
1-2 近年の日本の国際競争力の低下
大きくダウンはしてませんが、飛躍的にアップもしていない。
大手を振って未来は明るい!とは言えない状況だと思います。
1-3 経済競争優位の変化
インターネットを中心としたITの進化により競争優位の根幹が大きく変化しています。
国際経営開発研究所(IMD)が実施している調査で、「企業にとってビジネスをしやすい環境がどれほど整っているか」を基準に順位づけしたもの「国際競争力ランキング」というものがあります。
4つの指標「経済状況・政府の効率性・ビジネスの効率性・インフラ」をベースに300を超える項目で調査しているものです。
日本のランキングは、31位(2021年)でした。

かつて日本のランキングは、1989年〜バブル期終焉後の1992年まで連続1位でした。
97年から一気に17位に転落。それ以降は下降の一途をたどり、現在は2020年は過去最低の34位まで落ち込みました。
「経済状況」12位(前年11位)
「政府の効率性」41位(前年41位)
「ビジネスの効率性」48位(前年55位)
「インフラ」22位(前年21位)
先進国であるにもかかわらず、未だにFAXを使う文化(紙社会)があったり、先進国の中でもデジタル化、グローバル化に対応できない日本の性質が注目されました。
デジタル競争力ランキングの基準・指標の詳細
出典:(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」
97年以降、世界規模の競争優位の根幹改革が起きているなか、対応できない、進化できない日本政府や企業の在り方を見直す必要性が迫られているのだと思います。
競争優位性の変化とビジネス戦略の関係
具体的に、どのような競争優位・戦略に変化が起きているのか?
現在の経営戦略には何が最適なのか? (イメージ図参照)
高度成長期から、経営戦略として有効であった「オペレーショナル・エクセレンス」から変化の大きな時代では、「クリエイティビティ・アイデア」イノベーションを起こす柔軟な企業体力が求められています。
つまり、従来型の戦略と相反する次元を包括的に組み合わせる経営スタイルが必要なのです。
1-4 生産人口の減少・世代交代
以下は、アジア地域の生産人口の割合推移データです。

出典:自治体戦略2040構想研究会資料(第1回)
日本の生産(年齢)人口数は減少の一途です。
2020年の時点ですでに最下位ですが、それ以降もどんどん減少していくという試算です。
現在の生産力を維持し成長するためには、当然生産性の高い企業への変革が必須となるでしょう。
1-5 勤続意欲は非常に高い
コーン・フェリーという組織コンサルティングファームによる日本企業へのエンゲージメント調査の結果では、ギャラップ社による調査結果同様に日本企業は従業員のエンゲージメントが国際的に比較してかなり低いと報告しています。
一方、勤続意欲(辞めずに勤め続ける要望)は非常に高いということがわかっているそうです。
どういうことか?
夫婦関係で例えるならば、
仮面夫婦のようなもので、離婚するには面倒で手間がかかるから諦めた関係、状態。
関係修復や改善努力をせずに、そのまま居続ける状態だそうです。
妙に腹落ち感のある例えだな。と感じましたか?
夫婦関係でも、企業においても見て見ぬ振りをして行動することは良い作用は生まれません。
(夫婦のケースだと声掛けの内容も大切ですけどね・・・w)
変化の時代に行動意欲の低い社員ばかりが勤め続けることになれば、当然高いエンゲージメントの醸成は難しいですし、むしろ、企業として人的資本へ投資しても変革や活性化は望めないでしょう。
2、エンゲージメントを高める2つの組織論
従来のヒエラルキー型の組織形態では、市場環境の変化に適した柔軟な変化が生まれにくいという懸念点から、ホラクラシー組織やティール組織といった「自主自律型組織」への注目度が高まってきています。
ベンチャー企業のようなところは、マッチング度数は高いでしょう。
※ヒエラルキー型組織:ピラミッド型の縦型階層構造の組織のこと。経営者などを最高権・指令塔とし、機能、権限、責任などに応じて下層に末広がりする形態です。
もとは軍の組織形態が引き継がれたもの。責任や権限の所在はわかりやすいものの、意思決定に時間がかかるので変化・競争の激しいビジネス社会において、致命的なデメリットと言われています。


ホラクラシー組織
ホラクラシー型組織の対義語は、ヒエラルキー型です。
ヒエラルキーが中央集権型・階層型のピラミッドだとすると、ホラクラシーは分散型・非階層型のクラスターです。
組織を細かく分け、それぞれ最適なところで意思決定と実行を行う「自走的組織」です。
従来的な上司部下のような従属関係は存在せず、対等な立場の上に役割分担が存在している状態です。
昨今は I T の進化により様々な情報収集と選択判断ができてしまいます。知識の習得が容易な時代では上層部だけしか知らない・獲得できない情報やデータは無いので、いわゆる軍隊式の組織では経営が立ち行かなくなることが多いわけです。
ティール組織
ティール組織は「生命体」と比喩されます。
組織は社長や株主だけのものではなく、組織に関わるすべての人のものと捉えます。
「組織の目的」を実現するために共鳴しながら行動することは、ホラクラシー組織も一緒です。
マネージャーやリーダーといった役割が存在せず、上司や部下といった概念もありません。
構成員全体が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら目的実現のために組織運営を行います。
それが、ともに働く構成員の思考や行動がパラダイムシフトを起こすきっかけとなり、さらなる組織の進化につながっていくようになります。
どちらにしても「ホラクラシー組織」「ティール組織」ともに、セルフマネジメント能力が高い人で構成されることがポイントです。
3、エンゲージメントに類似する言葉との違い
「従業員満足度」「ロイヤルティ」「モチベーション」との関係
エンゲージメントと混同されやすい言葉に「従業員満足度」「ロイヤルティ」「モチベーション」の3つがあります。
これらとエンゲージメントとの大きな相違点は、結びつきの方向性 と言えます。
【従業員満足度】
従業員の満足度とは、従業員が待遇や環境、報酬に対してどれだけ満足しているかを示す。
会社が一方的に提供する関係です。
【ロイヤルティ】
ロイヤルティ(Loyalty)とは、忠誠心という意味。従業員の企業に対する忠実度を指す。
主従関係、労使関係の上に成り立つ関係です。
【モチベーション】
モチベーションとは、動機という言葉が当てはまります。
「意欲」や「やる気」と同様の意味で使われ、人に対して仕事などへの意欲を引き出すことを「動機づけ」と呼びます。
一時的なものなのでエンゲージメントのような持続性がありませんし、根本的に企業への愛着はない状態です。
「活動水準」「仕事への態度・認知」を用いた関連する概念整理
エンゲージメントに関連する概念をマトリクスにて整理すると以下の通りです。

出典:厚生労働省令和元年「労働経済の分析」より
従業員満足感のある状態のケースは、活動水準は高くないので生産性も低い、または自発的、意欲的な活動はできていない。という状態です。
4、エンゲージメントに影響をする6つのカテゴリー
以下の6つのカテゴリーが、エンゲージメントに影響があると言われています。
具体的なこととしては以下のとおりです。
エンゲージメントに影響するカテゴリーのチェックシート

どのカテゴリーが自社が強いのか?弱いのか?どう強くしたいのか?
客観的に評価したり、またはアンケート調査することで施策などを効果的に実施できるでしょう。
5、前編まとめ
多くの企業が、以下のような問題に直面している現状があると言われています。
◉優秀な人材確保、若年層の離職を回避したい
◉長期的な正しい経営を健全に実施しているか内外から注目されている
◉従業員の世代交代
上記の対策において効果的な要素として注目されているのが「エンゲージメント」でした。
「高くしたい」「強固にしたい」と経営陣はとても関心高い数字が出ているのもよくわかります。
コーン・フェリーが海外各国で行っているエンゲージメント調査結果では、コロナ禍の緊急事態宣言下で職場・個人に対する日本企業の環境整備努力には明らかな効果があり、それがエンゲージメントの維持並びに社員を活かす環境の向上に繋がった。と評価しています。
一方、グローバルな基準で比較すると、戦略・方向性やリーダーシップといった「社員の共感」を強く求められる領域においては、日本企業は劣ると示しています。
また、多くの日本企業の社員エンゲージメントに影響を与えているドライバー設問は
「キャリア目標の達成の見込み」でコロナ前後の比較においても変化していないそうです。
アフターコロナ時代の課題は、
改めて自社や事業の根源的な存在意義(パーパス)を問い直し、より強い方向性を示すことが最重要だとレビューしています。
コロナ禍のピンチをチャンスに変換する良いタイミングと捉え、企業への共感と求心力を高められるリーダーシップと施策を講じられるかが今後のエンゲージメント向上の鍵となりそうです。
今こそ、パーパス&MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の見直しや策定、さらには浸透をより確実に実行するため経営陣と管理職が一枚岩となった向上行動の習慣化をしましょう!
ここで、意外なTOPICです。
エンゲージメントの高い関係が存在する組織内はどんな状態か?を調査した結果。。
「感情という不合理性のあるものを重要視している」ということです。
上司からのオーダーにしても、相手に感謝の気持ちを添えるという、感情を扱うことでエンゲージメントが高くなることになります。(関係性をよくすることなので)
ちょっと話が脱線しましたが・・
今一度、丁寧に自社について調査・研究し、どこが弱くてどこが強いのか?
自社の”そもそもの”エンゲージメントの客観的な把握をしつつ、どのような社員と共鳴して事業を展開していきたいのか?
相互理解と信頼関係を深めるために整理することで、遠回りのようですが自社のエンゲージメントの向上に繋がるでしょう。
ーーーーーー次回の後編では
エンゲージメントの向上のための施策をされている各企業実例などをご紹介します。
また具体的な施策へ向けてのHowto、ヒントをご紹介、整理していきたいと思います。
是非、次回のコラムもお楽しみください!